灯りはいらんかね

知り合いの年配の男性から聞いた話です。



・・・



男は若い頃、セールスマンだった。

いろんなものを売って歩いたが、いつの時代も戸別販売とは難しいもので。

50軒家を周って、1軒話を聞いてくれたら儲けもの。

売れるか売れないかは二の次。



50軒、100軒とどれだけの家のドアを叩くことができるか。

気後れなくドアを叩けるものが、どんな話し上手よりもセールスに向いているのだ。





ある日、男は蛍光灯を鞄に詰め込んで家々を訪れた。

そしてある老婆の家にたどり着く。

老婆は戸を開けた。そして男の話を黙って聞いてた。



「どうでしょう?」

老婆に尋ねた。その返事とは。



「私、目が見えませんの」



男はああ!と思った。

盲の人に灯りを売りつけるとは。

老婆の様子で気づけなかったとは。



男が黙ってしまうと、老婆はこう言った。

「私、このとおり目が見えませんので、困っていたんです」



・・・



老婆曰く、蛍光灯がなくても自分は不自由しないのだが

稀に客がきたとき困るのだ、と。

客は灯りがないと不自由なので、すぐに帰ってしまう。

ほら、あなたも困るでしょう?



だから蛍光灯を、あなたがつけてくれませんか。



男は立ち上がり、天井に蛍光灯を取り付けた。



「つきましたよ」

「そうですか。ありがとう」



老婆は金を支払い、男は家を後にした。

何度か再び、老婆の家を訪ねたが

男は他の仕事に就き、交流は途絶えた。



・・・



その後、老婆がどう暮らしたのかは知る由もない。

しかし男は、このセールスで大切なことを学んだ。



相手の身になり考えるとか、そういう類のことではない。

どんな相手でも、話し掛けてみないと何も分からない。

ドアを叩かないと、何も始まらないということだ。



―おわり―


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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

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素晴らしい話。こういうことをブログに書きたい。

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます!

何事もやらないと始まらないとわかっていても、ついついしぶってしまうなぁなんて、この記事を読んで思ってしまいました。

少しの勇気で、道が開けるのかもしれませんね(´・ω・`)

>三代目さん♪

このような光栄なコメントを頂きながら
返信が今になってしまったこと お許しくださいませ

書きたいことが割りとそのまま書けたので
自分としては嬉しい限りです

人から聞いた話をまとめただけなんですけどねw


>水月さん♪

コメントありがとうございます!
今年もどうぞよろしくお願いします。

目の見えない人に蛍光灯を売る
知っていたならあまりできない発想ですよね
話の主さん 嬉しそうに語ってくれました

何か始める 始まりの一歩
なかなか踏み出せないけど 頑張ってみようかなと思いました
お知らせとか。
久しぶりにココに手を入れます。ブログブーム到来です。そして、 ショートストーリーブーム、始まりました。 いつまで続くか分かりませんが、どうぞよろしくお願いします。  
近況コメント (2015/3/17 up)
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