思い出は綿菓子

自転車で病院へ行く。

病院までダラダラと上った坂道が恨めしい。

頭痛の薬が効きすぎて、軽くふらつく。

オイオイ、大丈夫ですか?自分。



上り坂も緩やかになり、商店街も近い。

自転車を降りて、押して歩く。

熱っぽい体に、風が心地よい。

戸がガラガラと開き、私の目を引いたのは、赤い提灯の飾られた焼き鳥屋。

いつもの道。いつも通る道なのに。

半袖のを肩まで捲り上げ、店の準備をする男性。

「あの頃」が、私の身体を突き抜けていった。

雷のように落ちて、何故か空へ帰っていく。

ナンナノダ、この感覚は。





病院からの帰り道、また店の前を通る。

もう「開店中」になっていて、店の戸は閉まっている。

さっき垣間見た店内は、薄暗く古めかしい木材のテーブルと椅子、カウンター。



「あの頃」がまた、胸をよぎる。

寄せては返す波のよう、なんて、冗談じゃない。

「あの頃」はあの頃。冷凍保存したじゃないの。



「アノヒトハ、ベツノヒト」

そう、別人。

焼き鳥3本とビールで帰ればいいじゃない。

あの人は、別の人。

だけど私の心は、きっと面影を求めている。

「あの頃」を、何らかの形で追体験したいと思っている。



熱っぽいから帰ろう。

ビールは家にもあるし。

焼き鳥はないけど、美味しいハムがあった筈。



後ろ髪を引かれる。引くのは私自身。



さあ、帰ろう。温かい我が家へ。

否、冷房の効いた快適な我が家。

缶ビールを開けて、飲む。

オイオイ、頭痛は大丈夫ですか?



気づいてしまったあの店は、思い出の住処。

囚われてしまわぬよう、囚われてしまわぬよう。

久しぶりの缶ビールが脳内をゆるくさせる。



背中が似ていたな。

顔は見えなかったな。

似ていても似ていなくても、見えなくてよかった。

思い出をなぞるのは、くだらなく、甘い。

どうせなら。



夜店で、綿菓子を買おう。



終わり。


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テーマ:今、思うこと。 - ジャンル:小説・文学

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