ジャンケン鬼ごっこ~別のお話・後編~

【思い出のこちら側(後編)】


前編 ←はコチラです☆)



・・・



「ねぇ」

「うん?」

「あいこジャンケン 覚えてる?」

「あいこジャンケン? ああ 覚えてるよ」

「あれ 楽しかったね」

「そうだね 少なくともかばん持ちよりは楽しかったかな」

「ジャンケン 弱かったもんね ヒロくん」

「山下が強かったんだよ」



「そんなことないよ だってヒロくん…

ね ジャンケンしてみない?」

「え?ここで」

「そう」

「まあ いいけど」

「じゃあ いくよー ジャンケン、ホイッ」



僕はチョキ 彼女はグー

やっぱり 僕の負け

人生で負けて ジャンケンまで負けるのかぁ





「ヒロくん 変わってない」

「うん 弱いね」



「そうじゃなくって… ヒロくん ジャンケンでチョキを出すとき

いつも親指を 中指と薬指の間に入れてるって 気づいてた?」



「・・・え? そうなの?」

白くて細いその指で 僕のその癖を真似る彼女

ああ 言われてみれば 確かに…



「そうなの もう あの頃からずっとなんだから… 嫌になっちゃう」



笑う彼女 僕も笑う

情けなくって 笑ってしまう



「あいこジャンケンね 今 ひろ野とよくするのよ」

「ひろ野ちゃん…何歳?」

「3歳 もうすぐ4歳」

「大きいね」

「うん」

「幼稚園の…年少?年中くらいかな」



頭の中で計算してみる 

しかしそういうのは 独身の僕にはあまり分からない

彼女がラテを飲んでいる

ストローに少しついた 赤い口紅



「ヒロくんは 言わないのね」

「何を?」

「できちゃった婚、とか。」



俯いたまま ストローに口をつける彼女

こくんと一口飲んで まばたきをして 窓の外に視線を傾けた



「そう言われれば そういう計算になるのかな」

「うん そういうこと」



そういうことなのか

しかし そう言われても 特に何の感情も湧かない

僕にとって 目の前にいる彼女は 山下 もしくはチーちゃんであり

しかし 彼女にとってそのことは

僕が気づくより先に 言ってしまいたいような うしろめたいことなのだろう

生真面目な性格は 損をする

いつだって 誰だって そう 僕だって



「ひろ野ちゃん あいこジャンケンは強いの?」

「強いも弱いも… 何出しても いちいち笑うのよ」

「ああ 子どもの頃って そうだよね」

「そう オチャラカホイも教えたけど あいこジャンケンもオチャラカも一緒」

「飽きないよね」



「ほんと 飽きないのよ…

わたしは 飽きちゃうんだけどね」



・・・



ぽつんと時間が途切れる

僕はまた コーヒーをすする もうすっかり冷めている

「飽きちゃう」と言った彼女の顔は 降り出しそうな空のよう



「じゃあ今度 僕がひろ野ちゃんとあいこジャンケンをするよ」

「・・・」

「結構 いい勝負だと思うんだけど」



ラテを飲み終えた彼女は 髪からゴムを外して

右手の手首に戻した

肩にかかる 柔らかそうな髪

食べ物屋では髪をまとめる そういう女性を 僕は好きだ



「ヒロくんは かっこいいね」

「え?どこが?」

「かっこいいわよ それに優しい」

「優しいは 僕には褒め言葉じゃないなぁ」

「優しくなければ 男じゃない」

「そうかなぁ」

「そうなの」



・・・



笑う彼 わたしも笑う

情けなくって 笑っちゃう



「ねぇ 今度はちゃんとジャンケンしようよ」

「またジャンケン?」

「そう でも真剣勝負よ」



ジャンケン、ホイッで わたしが勝ったら・・・



・・・



「ジャンケン、ホイッ」

僕はチョキ 彼女はパー



「あーあ 負けちゃった」

「勝っちゃったねー 何か賭けとけばよかったよ」

「せっかく親指のこと 教えてあげたのに」

「だから グーを出すって?」

「そう」

「そんな簡単に 癖は直らないよ それに…」

「それに?」

「僕はやっぱり チーちゃんが教えてくれた あいこジャンケンが好きだな」

「・・・」



「僕はちっとも 飽きないんだよね」

チーちゃん 君と一緒に居られるのなら。



・・・



喫茶店を出る

強かった日差しは和らぎ 秋の雲が流れていく



僕たちはどこへ 流れていくんだろう



・・・



「じゃあ ここで」

「うん またね」

「今度は ひろ野ちゃんも連れておいでよ 僕が相手してあげる」

「ひろ野に相手してもらうんでしょ?」

「うわっ!酷い」

「嫌ですか?」

「光栄です」



君が笑う 僕も笑う

情けなくって 笑ってしまう



こんなに話しても

まだ 僕には聞けないことがある



・・・

 

「旦那さんにも よろしくって言わないの?」

「あ… よろしくね」

「うん よろしく言っておくわ 天国の ひろ野の父親にね」

「え? 旦那さん 亡くなられたの?」

「ううん 違うんだけど…」



ひろ野の父親 わたしの元夫は

ひろ野が2歳のとき 他の女性と暮らすために わたしたちを捨てた

「捨てる」と 彼が言ったのだ



ひろ野とふたり 実家に帰ったら

母が 「パパは 天国に行っちゃったんだよ」と ひろ野に言い聞かせた

ひろ野は 母のその言葉を信じて

祖父の仏壇を前にして 「天国のパパ」に 時々掌を合わせている

左手の薬指の まだ外せない指輪



そんなこと 言えない

ヒロくんの前で そんなこと 言いたくないよ



・・・



「まあ いいか」

「え?」

「よく分からないけど 山下が話したくないなら 別にいいよ」

「・・・」

「気が向いたら 話してくれてもいいし ずっと話さなくてもいいし」

「ずっと?」

「まあ ずっとは少し寂しいけどね 今は僕も 色々モラトリアムだからさ」



モラトリアム…もうそんな時期は過ぎたのに

横文字の曖昧な言葉で 僕は自分を誤魔化して

世間に対して お茶を濁している

恥ずかしくて情けない 今の自分



彼女の携帯電話が鳴った

「…うん そう もう駅 もうすぐ帰るから」

家からの電話のようだ

辺りはもう 薄暗く 半袖の腕が肌寒い



彼女の家庭 彼女の今の生活を想像してみる



色々 あるよな

当たり前だよな



触れられたくないこと まだ新しい傷口

抱えているもの 背負うもの 

痛み 責任 諦め 希望・・・



いつか お互い話せるように

今はそう あいこジャンケンを オチャラカホイを繰り返しながら



・・・



「じゃあ 今日はほんとにこれで」

「うん 気をつけて」
 
「今度 本当に連絡してもいい?」



少しトーンの下がった声

ピンクの服を着た アニメのキャラクターのストラップが揺れている



「いいよ ひろ野ちゃんに相手してもらわないとね」



君が笑う 僕も笑う

情けなくって 嬉しくって 笑ってしまう



バイバイ バイバイ

また明日 明日がダメならそのまた明日

子どもの頃の流行り歌

また会おう また話そう 近いうちに 君と 君のいとしい人と

少しだけ頭をかすめた 卑しい野心は 今は胸の底に沈めて



ジャンケン、ホイッで 僕が勝ったから・・・

僕は昨日より少し 強くなれたかな



―おわり―






【言い訳とか】



圧倒的に 後編が長くなってしまいました(汗

一晩寝かせた あのうまさ、的な 尾ひれとか背びれがついちゃいました

(うまくなったのか)



中編を作るほどの内容ではなかったので

(話の切れ目が見つからなかった)

長いですが まあ ちょっと我慢して読んで頂けたら嬉しいです♪



最後まで読んでくださった方 ありがとうございました!!

その他の反省は また後日~☆彡


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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

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読ませて戴きました^^
恵以子さん、面白かったですよ^^b

ジャンケンでほんわかした空気で終わるのかな?
っと思っていたら、その空気を維持したまま、山場があって^^
話に引き込まれて、最後まですんなり読めるお話でした。

また、こういうのや別のヤツとかも読みたいですね^^
っとご無理を言ってみます(笑)

では、では、また、また。

これ結構時間かかったでしょ?
ごめん。後編から読んじまったw

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ども( ゚∀゚)ノィョ―ゥ

このシリーズは何て言うか良かった(´∀`*)ウフフ
前回の方を読みきったときはヾ(・∀・;)オイオイ的な感じやったんやけど、
コレを読み終わってなんかスッキリって感じ(´∀`*)ウフフ

まぁ、あのステキなチーちゃんが×1ってのがちょっと嫌やけどさ・・・
まぁ、今後二人がそれなりの関係へ発展しそうな終わり方なのでよし( ´∀`)bグッ!
こーゆー系また期待してます(´∀`*)ウフフ

あ。個人的に物語りはハッピーエンドしか認めません(゚∀゚)アヒャ

>mkさん♪

読んで頂けましたかー
ありがとうございます!

>その空気を維持したまま・・・
これができたかは ちょっと自信がないのですが
まあ 行の割りに文字が少ないので
一気にUPしてよかったですw

別のやつはともかく こういうのは また期間をおいて挑戦してみます
もう少し 短い方が書きやすいです~★

感想 両方ともにありがとうございました!

>たけさん♪

後編は 色々足していったので それにはかなり時間とか手間とか割きました
大筋は 夜中に一気に書いてしまいましたので
時間が掛かったというよりは 夜更かしになったって感じですw

後編だけでも 話通じますよね(笑)
前半は…前振りです♪

>真ん中の鍵コメさん♪

そういうの 教えてくれたらとても安心します!
ありがとうございます♪

>。。。さん♪

どもどもども^^

>前回の方を読みきったときは・・・
前回が どの部分を指すのか とても気になります(汗
別のお話の前編だといいのですが…

>あのステキなチーちゃんが×1ってのがちょっと嫌やけどさ・・・
アハハ...(汗
まるさんが書いてくれた 本編の感想を読んだ時点で
もう この話の大筋は出来上がってましたのでw
すみません 夢がないですよねー

私も 読むのはハッピーエンドが好きです
でも 書くのはそうじゃないことも多いです^^
お知らせとか。
久しぶりにココに手を入れます。ブログブーム到来です。そして、 ショートストーリーブーム、始まりました。 いつまで続くか分かりませんが、どうぞよろしくお願いします。  
近況コメント (2015/3/17 up)
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