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リップクリームも知らぬ頃 1

「リップクリームは横に塗るのではなく

縦に塗る方がいい」

そんなことを聞いた夜

そのように塗ってみてなるほどと実感し 床につき

まだリップクリームを塗ることもなかった中学生の頃の出来事を思い出した





中学の三年間 正確に言えば中一の夏休みから家の近くの塾に通った

たまたま家から歩いて二、三分のところにその塾があり

夏休みは入塾テストなしに入ることができたので 入った

そのまま卒業するまで通い続けた



私の成績は入塾をきっかけに画期的に伸び

それはもう本当に劇的なくらいで 主要五教科が全部ひとつ上がった

そして希望の高校に入学することができた



塾は週に三回 一日三時間というなかなかハードなもので

英語と数学を経営者の先生、塾長が そして社会と理科を月替わりかなにかで一人のアルバイトの先生が教えてくれた

そのアルバイトの先生 ここではM先生としましょう

私はM先生に様々なことを教わった

無論 変な意味ではない 誤解されませぬよう先に釘をさしておきましょう



・・・



M先生は地元では有名な大学の法学部の学生さんだった

大学生だったか院生だったか知らないが とにかく学生

週三日 一日一時間ずつ それを三年間である

それ以前や以降にもバイトしていたかどうかは定かでない

私が知ってるM先生は いつもジーンズを履いていて痩せていて 目の細い人だった

そして左利きだった



左利きの人がホワイトボードに字を書くと

左手から文字がしゅるしゅる出てくるような感じで それがとても印象に残っている



・・・



定期テストの時期になると 私以外の生徒は皆 テスト勉強のため塾を休んでいた

しかし我が家では

「定期テストのために塾に行かせているんじゃない 普段どおり行け」

という父親の方針で 私は教室にひとりなのを分かっていてその間も塾に通った

しかし塾側としては これはありがた迷惑というかなんというか

生徒ひとりしかいないのに授業を進めることもできず

かといって 生徒が来ているのに閉めるわけにもいかず

私はひとり いつもの席に座り結局定期テストの勉強をすることになるのだ

自習という名の下に



そして夜の九時には塾長は帰り 入れ替わりでM先生がやってくる

塾長はともかく M先生にとっては本当に迷惑だっただろう

ひとりでも生徒が来ていたら 放置するわけにもいかないし

私も家庭教師や小さい塾などでアルバイトをしたことがあるから分かるのだが

これは面倒くさい 非常に面倒くさい

全員休みなら 自分も休みになるのに たったひとりの生徒のために休めない

ああ 申し訳なか。



それでもM先生は 私には嫌な顔を決して見せなかった

普段はどちらかというと仏頂面だったが

私ひとりのときはその仏頂面も抑えて 静かに私が自習するのを見ていてくれた

そして私が時折する質問に 淡々と でも熱心に答えてくれた



・・・



私が質問するのはたいてい数学か理科

英語や社会は暗記だったり努力だったりするのだが

数学や理科は質問し甲斐があるというか まあ苦手だったし



あるとき 理科の質問をして M先生が答えに窮したことがあった

今思えば M先生は法学部の学生 理科は苦手だったのだろう

得意(であろう)社会の質問はまったくせず 自分の苦手をついてくる生徒

うわー やだね これは嫌だ

M先生は散々悩んだ挙句 結局その日のうちに私が納得する説明をすることができず

「明日教えたるから 明日来い」

と私に言ったのだ



翌日 塾の日でもなかったのに塾に行った

それでなくても閑散とした定期テストシーズン

というか その日は日曜日だった おそらく 記憶の限り

教室はすっからかん

私が行くと M先生は既に来ていて

昨日導き出せなかった おそらく物理っぽい問題を丁寧に解説してくれた

一度では理解できず 二度か三度か

私が「あー、分かりました!」と言ったとき M先生は笑った

私が導き出した答えでもないのに 私もとても嬉しくなって 一緒に笑った

そして礼を言い 家に帰った



私が淡く 甘い気持ちをM先生に感じたのは その日が最初だった


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テーマ:エッセイ - ジャンル:小説・文学

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久しぶりにココに手を入れます。ブログブーム到来です。そして、 ショートストーリーブーム、始まりました。 いつまで続くか分かりませんが、どうぞよろしくお願いします。  
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